
こんにちは。
高千穂町議会議員の板倉哲男です。
新聞報道などで、町が高千穂中学校の移転先を従来の高千穂温泉跡地の案から高千穂小学校周辺に変更する方針を固めたと、伝えられました。
今回の記事では、高千穂中学校の移転について、これまでの経緯や、なぜ高千穂小学校周辺に変更するに至ったのか、私の知る限りで、整理したいと思います。
これまでの主な経緯
まず、これまでの、主な経緯をまとめます。
・令和5年6月
中学校の移転先に関する意見聴取会が開催される。
町内各地域・団体の代表者など49人が参加。
移転候補地についての意見聴取が行われる。
・令和5年10月~令和6年2月
町公連会長、町内各校PTA会長、町議、教育委員、校長などで構成する「移転新築検討委員会」において中学校の移転先を検討し、高千穂温泉跡地を最適地として選定し、町長に答申する。
ただし、この時点の検討材料は、候補地ごとの造成のみの概算費用と造成期間及び通学環境の違いなどに限られていた。
また、小学校隣接地について、遺跡調査に5年かかるとしていた。
・令和6年3月定例会
町長が中学校移転について「1日でも早く高千穂温泉跡地での整備を進めたい」と議会で公言。
また、高千穂の湯の解体設計や用地測量などの予算を含む一般会計予算が可決。
・令和6年9月
町内4団体より、高千穂高校敷地内への移転の再検討を求める要望書が提出される。
要望を受け、再検討及び再調査のため、令和6年度に実施予定だった用地測量などは保留とされる。
(なお高千穂の湯の解体設計については執行済み)
・令和7年3月29日から4月4日
町内4カ所で5回にわたり、中学校建設に関する中間報告会を開催。
この時はじめて、候補地ごとの概算総事業費が公表される。
また、当初5年かかるとしていた高千穂小学校隣接地の遺跡調査が、敷地の取り方によっては、1年で終わる見込みであることが示される。
・令和7年9月11日から9月13日
3回にわたり、町内小中学校の保護者向け中間報告会を開催。
・令和8年1月~2月
町内在住の18歳以上の全ての町民を対象とした、中学校移転新築に関するアンケートを実施。
・令和8年4月28日
移転新築検討委員会及び建設検討委員会の委員が招集され、アンケート結果などについて説明がなされる。
また、最終的な移転場所の決定については、町執行部に一任することが承認される。
・令和8年5月25日
移転場所を、高千穂小学校周辺に変更する方針を固めたとの報道がなされる。
検討委員会は候補地の変更の可能性を承認
上記のとおり、中学校の移転先については、移転新築検討委員会において、高千穂温泉跡地が最適と選定されていました。
新聞報道だけでは、「一転して、高千穂小周辺に変更」という印象を受ける方もいるかもしれません。
しかし、令和8年4月28日に開催された委員会で、アンケート結果や、候補地ごとの最新の概算事業費について説明が行われました。
私も委員として出席していましたが、その際、「移転新築検討委員会の答申を尊重しつつも、アンケート結果や事業費などを踏まえ、最終的な候補地は町として判断したい」という趣旨の説明があったと記憶しています。
そして、委員会としては、温泉跡地からの変更も含め、最終決定を町執行部に一任することを了承しました。
そのため、検討委員会の委員である私としては、町は適切な段取りを踏んだうえで、今回の方針変更を決定したと受け止めています。
候補地ごとの概算事業費は
今回、町の方針を変更することとなった背景のひとつに、新聞報道では、あまりふれられていませんが、候補地ごとの総事業費があると思います。
結論から言うと、最も事業費を抑えられる候補地が、高千穂小学校隣接地です。
概算事業費については、中間報告会でも候補地ごとに示されましたが、その後さらに外部の専門家に委託し、どこまで補助金を活用できるななども含めて、より詳細に概算事業費を算出しています(下記参照)。
なお、外部専門家に委託する時点で、移転先候補地を、高千穂温泉跡地、高千穂小学校隣接地、高校併設の3つに絞っています。
また、補助金については、現時点で、どれだけもらえるかわかりません。そのため、下記は現時点でもらえる可能性のある最小額と最高額としています。
・高千穂温泉跡地
全体事業費:42億8762万円
補助金(最小):6億9189万円
補助金(最高):12億6359万円
町で準備する資金:35億9572万円~30億2403万円
・高千穂小学校隣接地
全体事業費:30億7221万円
補助金(最小):5億4472万円
補助金(最高):9億1349万円
町で準備する資金:25億2749万円~21億5872万円
・高校併設
全体事業費:36億7702万円
補助金(最小):3億98万円
補助金(最高):6億8832万円
町で準備する資金:33億7604万円~29億8870万円
当然ながら、町で準備する資金が気になります。
どこの候補地であれ、町がこれだけの金額を一括で準備することは難しいため、一定程度は借金(地方債)によって対応することになります。
また、その返済の一部については、国が地方交付税で措置する仕組みがあります。ただし、どの程度措置されるかは現時点では確定していません。なお、制度上の計算では、最大で約7割が交付税措置される可能性があります。ただし、あくまで可能性の話になります。
アンケートの結果は
町の方針変更に至ったもうひとつの要因として、アンケート結果も大きかったと思われます。
アンケートでは、いろいろな質問がありましたが、町として重視していた質問のひとつが、町の方針である「小中学校の連携強化や小中一貫教育」について、理解できるかとうか、という質問であったと思います。
この質問についての回答は、
・理解できる 46.7%
・ある程度理解できる 38.9%
となったそうです。
つまり、全体の85%が、理解できる、ある程度理解できる、という結果です。
また、立地として何を重視するか、という項目もありましたが、この質問についての回答は
・災害リスクの低い安全な場所 32%
・敷地が広く運動場や施設が充実できる場所 26.5%
・町の中心部でアクセスが良い場所 22.1%
となっています。
災害リスクについては、現在の場所に比べると、どの候補地でも改善されるので、あまり候補地の優劣はつきにくいと思います。
敷地の広さについては、温泉跡地が約21,500㎡、小学校隣接地が約12,200㎡、高校併設が約9,600㎡となっています。
温泉跡地が現時点で最も広いのですが、もし将来的に小中一貫校にする必要が出てきた場合、やや狭くなります。
一方、小学校隣接地ですが、既存の高千穂小学校が約16,000㎡あり、小学校隣接地の約12,200㎡とあわせると、温泉跡地よりも広くなります。
高校併設について、高校の敷地全体では、約50,500㎡と広いものの、町として活用できそうな土地は限られることになります。
これらのことから、敷地の広さに関しては、高校併設よりも、温泉跡地と小学校隣接地の方が、広い場所ということになります。
そして、「町の中心部でアクセスが良い場所」という観点では、温泉跡地よりも、小学校隣接地や高校併設の方が利便性は高いと考えられます。
これらのことから、最終的に、敷地が広く、町の中心部でアクセスが良い場所となると、小学校隣接地が該当すると思われます。
今後の議会の対応は
上記のとおり、一旦は、高千穂温泉跡地で進めようとしていた高千穂中学校の移転新築ですが、その後の概算事業費の精査や、アンケートの結果を踏まえ、高千穂小学校周辺に変更する方針を固めたのだと思います。
では、議会はどのように対応するのかについて解説します。
まず、「高千穂中学校の移転先をどうするのか」ということは議案ではありません。
予算案や条例案などは、議案として審議するのですが、中学校の移転場所をとこにするかについては、予算でも条例でもないからです。
ただ、中学校の移転は、町にとって重大案件ですので、議会として、中学校の移転新築について検討するため、議会内に特別委員会を設置しています。
その特別委員会が、次回、6月2日に開催予定です。
この時に、小学校隣接地への変更についての賛成意見、反対意見が、それぞれの議員から出ると思います。
町執行部としては、当然ながら、多くの議員が賛成の立場であることを望んでいます。
なぜなら、今後は議案として、中学校の造成工事費や建設費といった予算案を、議会に提案し、承認してもらう必要があるからです。
こうしたことがあるので、新聞記事にあるように、町長が「現時点で移転先の回答はできない」という発言もあるのだと思います。
この特別委員会の結果については、6月の議会にて、委員長報告がなされることと思います。
ぜひ、議会に注目していただければと思います。
では、今回はこれで失礼します。
