こんにちは。
高千穂町議会議員の板倉哲男です。
遅れておりました議会だよりが、先日、ようやく発行できました。
前回の9月議会は、これまでにもお伝えした通り、平成30年度の決算についての審議が主なものでした。
さっそく、ある方から「町報と議会報とでは、決算についての説明が全く異なるんだけどどっちが正しいの?」といった質問をいただきました。
正直、そうした反応を狙っていたので、私としてはしてやったりなのですが、これについて、少し補足をしたいと思います。
町報の伝え方のおさらい
まずは、町報における30年度決算の記事を読んでみましょう。
ふむふむ。
「実質収支が1億1,190万円の黒字」。
さらに読み進めると、健全化判断比率についての記事もあります。
「健全な財政運営」とあります。
これだけ読むと、高千穂町の財政はとても良い状態ですね。
ちなみに、「実質収支が1億1,190万円の黒字」の「実質収支」という言葉を、頭の片隅におきながら、次を読んでくださいね。
議会報の伝え方のおさらい
次に、議会報を読んでみましょう。
「実質単年度収支が5年連続で赤字」
「基金取り崩しで対応するなど、厳しい財政運営」
といった説明があり、これだけ読むと、高千穂町の財政は大丈夫かと、心配になりますね。
どっちの説明が正しいの?
町報には「健全な財政運営」とあるにもかかわらず、議会報では「厳しい財政運営」とあります。
なぜ、同じ平成30年度の決算を伝える記事の説明が、こうも違うのでしょう?
一体どちらの説明が正しいの?と疑問に思うかもしれません。
しかし、実はどちらも間違った説明ではありません。
ただし、町報と議会報とでは、視点というか、スタンスというか、主張のよりどころが異なります。
町報は、財政健全化法を主張のよりどころとしており、議会報は実質単年度収支を主張のよりどころとしています。
財政健全化法とは
2006(平成18)年6月に北海道の夕張市が財政破綻しました。
第二の夕張市を出してはいけないということで、自治体の財政破綻を未然に防ぐため、財政健全化法が2007(平成19)年に制定されました。
自治体の財政状況を、実質赤字比率など4項目で示し、仮にいずれかひとつでも基準を超えると、「財政健全化計画」もしくは「財政再建計画」の策定が義務付けられるというものです。
町報では、財政健全化法の4項目について、高千穂町が基準を下回っていることに着目しており、その限りにおいて、高千穂町が「健全な財政運営」ができているという説明をしています。
財政健全化法をクリアできていないのは夕張市のみ
財政健全化法の4項目が基準以下だから、町の財政が全く問題ないのかというと、それはまた別の話になると思います。
そもそも、現在2019(令和1)年11月現在で、財政健全化法4項目の基準を満たしていない自治体は、財政破綻した夕張市のみです。
では、夕張市以外の全ての自治体の財政状況は良いのかというと、そうとは言い切れません。
4項目とは別の視点で町の財政を見てみると、また別の見方ができます。
その一つが、議会報が主張のよりどころとしている実質単年度収支です。
実質単年度収支とは
まず、「実質収支が1億1,190万円の黒字」というのを思い出してください。
しかし、実際には、この黒字の中には、昨年度における黒字分も含まれています。
昨年度における黒字を引いたものが、「単年度収支」になります。
ちなみに、平成30年度の単年度収支は3851万円の黒字です。
しかし、この中には実質的な黒字(基金積立)や、実質的な赤字(基金取り崩し)が含まれています。
これら実質的な黒字、赤字を除いたものが、「実質単年度収支」です。
表にあるとおり、平成30年度の実質単年度収支は2億3507万円の赤字です。
そりゃあ、2億7486万円も基金を取り崩したら、赤字になりますよね。
議会報では、この実質単年度収支が5年連続で赤字になっていることを主張のよりどころとし、町の財政が「厳しい財政運営」となっていると説明しています。
まとめ
以上をまとめると、こうなります。
町報では、財政健全化法の4項目について、基準以下であることに注目し、町の財政を「健全な財政運営」と説明している。
一方、議会報では、実質単年度収支が5年連続で赤字になっていることに注目し、町の財政が「厳しい財政運営」となっていると説明している。
ということになります。
つまり、結論としてはどちらも正しく、間違ったことは言っていない、ということになります。
同じ事実でも、伝え方ひとつでかなり変わってきますね。
では、今回はこれで失礼します。
<参考リンク>
・広報高千穂2019年10月号