
こんにちは。
高千穂町議会議員の板倉哲男です。
3月議会では、岩戸地区のあまてらす館の運営権を、一般社団法人いわとむらに移行する議案もありました。
この件、あまり、大きな話題にはなっていないと感じるのですが、私個人的には、大きな出来事でした。
今回の記事では、この件について、まとめたいと思います。

まちづくり事業として建設したあまてらす館
あまてらす館の建設は、平成28年度から三田井地区と岩戸地区で取り組んでいる、まちづくり事業における取り組みの一環になります。
あくまで私の解釈ですが、まちづくり事業は、
(1)高千穂町らしい町並みデザインの形成
(2)住民にも観光客にも快適なハード整備
(3)商業・観光の活性化
といったことを目標に取り組んでいる事業になります。
これまでの取り組みとして、
三田井地区においては
・高千穂神社から槵觸神社までの町道整備
・旧商工会跡の整備(現在も整備中)
岩戸地区においては
・門前町通りの町道整備
・あまてらす館およびポケットパーク整備
・天岩戸橋の側道橋整備
などが実施されています。
住民の意見からうまれたあまてらす館
まちづくり事業の最大の特徴は、住民の意見がまちづくりに反映されるよう、地域の顔というべき人を集めた協議会を組織したり、誰でも参加できるワークショップを数多く開催したことです。
私自身、議員になる前から、ワークショップに参加させていただきまし、議員になってからは、三田井地区まちづくり協議会の一員に加えていただきました。
そうした話し合いの中で、岩戸地区において、地元の人が集まったり、子どもたちが雨宿りしたり、観光客が憩うことのできる施設があればよいのではないかという案があり、それを実現したのが、天岩戸交流センターあまてらす館です。
完成したのが令和3年2月。
事業費はおよそ9500万円で、国が4割、町が6割を負担しました。
運営については不透明だったあまてらす館
住民の声から新たな施設が整備されたことは、とてもよいことです。
しかし一方で、整備後に、誰がどのように運営するのか、ということについて、最初から明確な答えがあったわけではありません。
あまてらす館を整備する時には、私はすでに議員でしたので、整備後の運営について質疑した際、「当面は地域おこし協力隊が中心となり運営するが、退任後は、、、」というような答弁だったと記憶しています。
実際にあまてらす館は、開館以来、地域おこし協力隊1人と会計年度任用職員1人の2人体制で運営されましたが、令和4年度末に地域おこし協力隊だった人が退任した後は、会計年度任用職員1人のみでの運営となっていました。
そして1人体制となってからは、それまで開館できていた土日や祝日の時に、開館が難しくなっていました。
土日や祝日に閉まっていては、せっかくの施設も宝の持ち腐れです。
あまてらす館をどのように運営するかは、町にとって課題でした。
協議会有志が法人設立し、あまてらす館を運営
そんな状況の中、岩戸地区まちづくり協議会の有志が、「一般社団法人いわとむら」を設立しました。
法人の主な事業内容は、天岩戸神社の駐車場の管理です。
天岩戸神社の周辺には複数の駐車場がありますが、最も参拝客の多い西本宮駐車場について、令和6年度から有料化し、その駐車場の管理をするのが、「一般社団法人いわとむら」というわけです。
なお、「一般社団法人いわとむら」を設立したのは、駐車場から利益を得ることが目的ではなく、駐車場から得られた利益を、地域活性化に活かすことが目的とのことです。
実際に、岩戸地区の全公民館に、一定額の寄付をしているそうです。
それまで有効に活用されていなかった資源(駐車場)を有効に活用し、その利益が地元に直接的に還元されることは、地域活性化のお手本といえます。
あまてらす館を事務所として
その「一般社団法人いわとむら」が、事務所として、あまてらす館を活用するということを、令和6年度から試験的に行っていました。
その結果、土日、祝日も開館できるようになり、施設の利用者は10倍に増え、観光客や地域住民の多くのニーズに対応できるようになりました。
また、あまてらす館の施設内にイスとテーブルがあることで、周辺の店舗で買ったものを食べることができるので、店舗としては回転率が上がり、また、あまてらす館にごみ箱があることで、周辺の美化にもつながりました。
さらに、本業である駐車場管理への影響はほとんどないということで、地域にとっても、「一般社団法人いわとむら」にとっても、問題がないことがわかりました。
さらにさらに、町にとっても、あまてらす館を「一般社団法人いわとむら」が管理してくれると、会計年度任用職員を雇用する必要もありません。
以上のことから、令和7年度からは、正式に、あまてらす館の運営権を、「一般社団法人いわとむら」に移行することとなりました。
高千穂町で初のコンセッション方式
公共施設の運営を民間事業者へ委託するということ自体は、めずらしいことはありません。
高千穂町でいえば、
武道館や管理センターなどは、株式会社文化コーポレーションへ、
道の駅や鬼八の蔵は、株式会社高千穂まちづくり公社へ、
養護老人ホームときわ園や老人福祉管を、高千穂町社会福祉協議会へ、
という感じです。
これらについては指定管理者制度に基づいた委託であり、管理を委託しているとはいえ、あくまで公共施設を管理・運営している主体は高千穂町です。
しかし、あまてらす館については、こうした従来の委託とは異なり、運営権を民間事業者である「一般社団法人いわとむら」に移行するということで、管理の主体は民間事業者側になります。
このように、施設の運営権を民間事業者に移行する方法を、コンセッション方式といいます。
コンセッション方式の場合、民間事業者の裁量が大きくなるのが特徴です。
例えば、あまてらす館の施設利用料について、高千穂町が定めた上限額の範囲内で、「一般社団法人いわとむら」の裁量で変更することも可能です。
また、指定管理者制度の場合、基本的には行政側が、委託料を支払うことになりますが、コンセッション方式の場合は、基本的に行政側が委託料を支払うことはありません。
むしろ今回の「一般社団法人いわとむら」のケースでは、「一般社団法人いわとむら」から高千穂町に、毎月6万4000円の施設利用料が支払われます。
つまり、高千穂町にとって、施設の管理をする人を雇う必要がなくなり、かつ、毎月収入もあるということで、メリットしかない方法なのです。
町としては、毎月の収入をきちんと基金のように積み立て、約20年後の改修に備えることが求められます。
まとめ
あまてらす館の設立から運営権の移行までを振り返ると、結果的にはとても良い形に落ち着きましたが、これら全てが当初から計画されていたわけではありません。
町として運営の在り方を十分に協議していなかった中で、有志が法人を立ち上げ、事務所として活用してくれたことで道が開けたのです。
行政が整備した施設を、地元有志による民間法人が管理する現在の形は、理想的なまちづくりの姿だと思います。
この成功の背景には、行政と住民が力を合わせ、課題に向き合ってきた積み重ねがあります。
まちづくりに正解はありませんが、「地域を良くしたい」という思いで行動してきたからこそ、地域にとって最もふさわしい形が自然と生まれてきたのだと思います。
こうした取り組みが、多くの地域に広がるきっかけになれば幸いです。
今回は、これで失礼します。