
3月29日の報告会に参加したのですが、率直に思ったことは「果たして、町民の皆様が、どのような経過をたどって今に至るのか、きちんと理解していただけただろうか」ということです。
ちなみに私は、令和5年10月から開催された「高千穂中学校移転新築検討委員会」の委員として参加していました。
高千穂温泉跡地を移転先として選定した当事者です。
どのような経過で現在に至っているのか、知っているからこそ、3月29日の中間報告会の説明だけでは、不十分だと感じました。
どのような情報が不足していたのか、また、私個人が、現在、中学校の移転について、どう考えているのか、書かせていただきます。
令和5年10月時点に示された候補地の情報
時系列で説明します。
ご承知の通り、移転新築検討委員会が令和5年10月から令和6年2月まで、計5回開催され、高千穂温泉跡地が移転場所として選定されました。
この間、移転新築検討委員会がどういった情報に基づいて、検討したのかというと、5つの候補地(温泉跡地、運動公園、小学校隣接地、折原、上野)の地理的特徴と概算の造成費用のみです。
例えば、次のような感じです。
温泉跡地は町有地で敷地が広く、バス停が近くにありアクセスがよい。造成費用は1億3000万円ほど。
運動公園は敷地が狭く、また、交通量が多い。他の施設と隣接のため、学校に多くの人が出入り可能となり、防犯面の検討が必要。
小学校隣接地は、遺跡調査に5年ほどかかり、高低差のある地形のため造成費用は約5億5000万円。
つまり、建設完成までのトータルの事業費は示されていませんでした。
私はこれだけでは情報が不足していると感じました。
そのため、各候補地の総事業費を出してくれないか、と訴えましたが、場所が決まらなければ、総事業費を出すのは難しい、とのことでした。
当時、災害復旧で建設課の職員は連日、時間外勤務を強いられていたので、中学校のことまで手が回らなかったのだと思います。
なお、高千穂高校敷地内への移転については、実現は難しいとの判断で、候補地に入っておりませんでした。
移転新築検討委員会において重視された要素
このように情報が不足する中、移転新築検討委員会において、重視されたのは「通学しやく、かつ、安全な場所に、できる限り早く移転する」だったと感じます。
運動公園は安全面に課題がある。
小学校隣接地は、時間もお金もかかる。
折原、上野は、町内全地区からの通学するには、スクールバスが必要で経費がかさむ。
そのため、温泉跡地が候補地と選定されました。
実際の選定過程は、各委員の投票によるものでしたので、全ての委員の方が同じように考えたどうかはわかりませんが、少なくとも、私の考えは上記の通りです。
4団体からの要望書とその後の再調査
令和6年9月に、町内4団体から、高校敷地内への移転の再検討を求める要望書が提出されました。
それを受け、教育委員会を中心に、町の考えを改めて明確に示すため再調査が行われました。
その調査が終了したということで、今回の中間報告会となりました。
中間報告会で示された情報
中間報告会に先立って、3月26日に、検討委員会の委員に、再調査結果の資料が示されました。
5つの候補地の総事業費の試算が示されていました。
温泉跡地は約32億円。
運動公園は約21億円。
小学校隣接地は約23億円。
温泉跡地の場合、温泉施設の解体に4億円以上かかることや、隣接している給食センターの移転に3000万円以上かかることなど、令和5年10月時点では、示されていませんでした。
また、小学校隣接地について、遺跡調査が5年かかるとしていましたが、敷地の取り方によっては、1年ほどで遺跡調査が終わるとのことでした。
さらに、検討次第では、小学校と体育館や運動場を共同利用することで、整備費を5億円ほど削減できるとのことでした。
この資料を見た私の第一声は「この資料を令和5年10月の移転新築検討委員会で示すべきではなかったのか」です。
なお、町単独による調査ではありますが、高校敷地内に仮に移転した際の試算も示されました。
調査結果によると、現在の高校の空き教室だけでは、中学校に必要な施設をまかないきれないため、不足する施設については、建設する必要があるとのことです。
2つのケースがあり、一部高校施設を活用するケースで15億円ほど。
高校敷地内に中学校に必要な全ての施設を建設するケースで19億円ほど、とのことでした。
また、一部高校施設を活用する場合は、すでに高校施設が老朽化していることから、今後10年から20年以内に、高校施設の改修についても、町がいく分か負担することになるだろうとのことでした。
中間報告会の参加者の意見
3月29日に、1回目の中間報告会が役場で行われました。
私も参加したのですが、参加者の意見としては、「32億円もかけて町の財政は大丈夫なのか」「高校敷地内が最適な移転場所ではないか」といったものだと感じました。
もっともな意見だと思います。
今、私が個人的に思うこと
先述のとおり、移転新築検討委員会にて移転先を検討した際の情報は、あまりに不足したものでした。
今、私が思うことは、今回新たに示された総事業費の情報などを踏まえて、移転先を再度検討する必要がある、ということです。
あくまで私の考えですが、主な候補地の特徴は次のとおりです。
●温泉跡地
<メリット>
町有地のため、すぐにでも事業に着手できる。
敷地が広い。
<デメリット>
総事業費が32億円と高額。
町の中心部から、やや離れる。
●小学校隣接地
<メリット>
総事業費は23億円ほど。
小学校の体育館や運動場を共同利用できれば、総事業は18億円ほどに抑えられる。
町の中心部で立地が良い。
<デメリット>
私有地のため、用地取得が必要。
敷地は狭い。
遺跡調査に1年はかかる。
●高校敷地内
<メリット>
総事業費は15億円から19億円ほど。
町の中心部で立地が良い。
<デメリット>
県の土地のため、県との交渉が必要。
県立高校と町立中学校の管理運営上の難しさがある。
高校施設を共同利用した場合、高校施設改修に町の負担が発生する。
敷地は狭い。
最後に
高千穂中学校の移転先を検討する過程において、もっと円滑に進めることのできる方法があったのではという指摘は、至極当然だと思います。
ですが、結果的に、現在、多くの町民の皆様が、高千穂中学校の移転を自分事ととらえ、そして何より、まちの未来・こどもたちの未来を真剣に考えてくれている状況は、とても良いことだと思います。
どの候補地にも、メリットとデメリットがあります。
これらを総合的に検討する必要があります。
そして、中間報告会が4月1日から4日にかけて、町内各地で開催されます。
ぜひ、参加していただければと思います。
まちの未来のため、こどのたちの未来のために、決して町が分断することなく、建設的に合意形成が図られることを望んでいます。