こんにちは。
高千穂町議会議員の板倉哲男です。
今日は、令和4年度の目玉事業の1つである、まちづくり公社関連の事業について、まとめたいと思います。
いつもは議会だよりの発刊とあわせてブログを書いていますが、今回はブログを先行させました。
というのも、まちづくり公社については、多くの方が関心を持ってくださっており、私も聞かれることがある一方で、行政側の説明不足や認識のズレからか、誤解も多いなと感じたからです。
そこで、現在時点の私が知り得ている情報をもとに、まとめたいと思いました。
まちづくり公社(仮称)とは
では、高千穂町が進めている「まちづくり公社(仮称)」とは何か、というところから説明します。
「まちづくり」と聞くと、街並みの整備や再開発など、ハードの整備を想像するかもしれません。
しかし、現在、高千穂町が進めているまちづくり公社は、そうではなく、ソフト面の事業です。
地域の資源を活用し、地域で稼ぎ、稼いだお金をさらに地域に投資をすることで、地域内における良い経済循環を作り出そうというものです。
道の駅と鬼八の蔵の運営
これだけだと、わからないですよね(笑)?
もう少し、具体的に説明します。
現在、高千穂町には、道の駅高千穂と、がまだせ市場鬼八の蔵という、2つの物産店があります。
どちらの物産店も、建物はどちらも基本的には町のもので、公設の施設です。
一方、運営は両施設で異なります。
道の駅高千穂は、高千穂町が直接運営しているので、公営。
がまだせ市場鬼八の蔵は、出荷者の組合が運営をしていますので、民営です。
長年、この体制で運営がされてきた両施設ですが、それぞれに課題があります。
例えば、道の駅は当然ですが利益を追求する施設です。
しかし、利益を追求するための運営方法として、公営というやり方が合致しているとはいえないのが実情です。
また、鬼八の蔵の出荷者の組合は、法人格のない任意団体のため、事業拡大のために融資を受けようと思っても、なかなか受けることができないといった課題があります。
そうした課題を解決するため、高千穂町は法人格のある(おそらく株式会社として)「まちづくり公社」を設立し、両施設の運営を委託する考えです。
そのため、変わるのは、両施設の運営者です。
よくある誤解として
「道の駅と鬼八の蔵を経営統合するんでしょ。どっちを残してどっちをつぶすの」
というパターンがあります。
経営統合というか、現在は両施設で別々の運営ですが、どちらの施設も同じ会社が運営するようになり、どちらも存続します。
ふるさと納税の業務委託
まちづくり公社に期待される役割として、ふるさと納税業務もあります。
高千穂町におけるふるさと納税は、現在、町の職員がほぼ全ての業務を行っています。
しかし、ふるさと納税で多くの寄付金を集めている自治体ほど、外部に委託できる部分については、外部に委託しています。
ちなみに、今回、高千穂町がまちづくり公社の参考モデルとしている南小国町の事例では、ふるさと納税を、10倍にまで伸ばしているそうです。
現在の高千穂町のふるさと納税の寄付金額は、毎年、1億4000万円程で推移しています。
10倍は難しいとしても、せめて、3倍くらいにはなってほしいですね。
高千穂町が選ばれるために不可欠な情報発信
ふるさと納税について、今よりも伸ばすために必要になってくるのが、情報発信です。
例えば、和牛というジャンルで見ると、とても多くの競合が存在します。
その中から、高千穂牛を選んでもらう必要があります。
選んでもらうためにも、情報発信が必要になります。
さらに、ふるさと納税だけでなく、観光地として、さらには移住・定住先として選ばれるための情報発信も期待されます。
まちづくり公社関連の予算
まとめると、まちづくり公社の業務としては
(1)道の駅・鬼八の蔵の運営
(2)ふるさと納税の委託業務
(3)情報発信
となります。
では、これらの事業に高千穂町が取り組むために、どれだけの予算を充てているのかを見てみたいと思います。
主な予算は下記となっています。
・出資金 3000万円
・まちづくり公社運営委託料 1520万円
・まちづくり公社設立準備委員会運営委託料 539万円
・市場調査及び地域活性化戦略策定委託料 700万円
出資金は、まちづくり公社を設立するにあたり、町が3000万円を出資するということです。
100%町が出資し、町が筆頭株主になります。
そのため、まちづくり公社の形式上のトップは町長になります。
まちづくり公社運営委託料は、まちづくり公社の事務所の家賃や改修費用、人件費です。
まちづくり公社設立準備委員会運営委託料は、委員への費用弁償や、会社設立の登記費用、旅行業登録費用など。
市場調査及び地域活性化戦略策定委託料は、現在、まちづくり公社設立を伴奏してくれているコンサルに支払う委託料ですが、モニターツアーの企画・運営、詳細な事業計画の策定などの費用です。
その他の諸々の経費もあわせて、5880万円の事業費となっています。
また、上記とは別途で、情報発信事業の委託費用として、2160万円が当初予算に組まれています。
内訳としては、ホームぺージ制作、地域資源の商品化(体験プログラムづくり)、人材育成セミナーの企画・運営など、となっています。
ただ、この情報発信の委託については、国の補助金の関係で、実際の金額は大幅に減額する可能性が大きいということだそうです。
気になる財源は
まちづくり公社関連事業には、情報発信事業の委託以外に、5880万円の予算を充てているわけですが、ここで気になるのが、この財源です。
まず、出資金の3000万円については、全額、ふるさと納税の寄付金を積み立てていた、ふるさと応援基金からの繰り出しです。
また、国の地方創生交付金制度を活用し、2370万円の交付が見込まれています。
そのため、町として純粋に自腹を切る金額は、かなり抑えられているといえます。
出資金がふるさと納税を財源としている点について質疑
高千穂町は、ふるさと納税で寄付していただいたお金を、ふるさと応援基金として、毎年、積み立てています。
そして、令和4年度の当初予算において、その基金から3000万円を取り崩し、それを全額、まちづくり公社の出資金に充てるとなっていました。
私はこの点について、問題があるのではないかと感じました。
というのも、ふるさと納税を寄附する際には、寄付者が寄付金の使い道を希望することができるうようになっています。
高千穂町の場合、「少子・高齢化対策」「観光の振興」「農林業の振興」「教育の振興」などを設けており、寄付者はそれぞれ選択したうえで寄付をします。
にもかかわらず、あくまで当初予算においてですが、ふるさと納税の寄付金で積み立てたお金から3000万円を引き出し、全額、まちづくり公社の出資金とするのは、寄付者の希望に沿えない場合もあるのではないかと思いました。
そのため、この点について、本会議で質疑をしました。
そのやりとりを簡単にまとめると、以下のとおりです。
Q.ふるさと応援基金からの繰入金を全額まちづくり公社の出資金とすることについて、寄付者から疑問の声があがることもあるのではないか。もし、疑問の声があった場合、どのように返答するのか。
A.ふるさと納税の使途について、当初予算の段階で計画しておくべきだったとは思う。当初予算においては、まちづくり公社の出資金のみとなっているが、年度末にはふるさと納税の寄付金を、これらの事業に充てたということを説明、報告できるようにしたい。
今後のスケジュールは
今後のスケジュールについて、町としては、スピード感を持って実行したいとしています。
6月には、まちづくり公社を設立。
また、鬼八の蔵については、営業を一旦止めて、直売所利用組合の精算や、店舗リニューアルに向けた準備に取り掛かります。
一方、道の駅については、もともと町の直営のため、営業を続けることも考えているようです。
そして、7月には、2店舗とも、まちづくり公社の運営として、切り替えるという予定だそうです。
実際の経営トップが未定
町が出資するため、形式上のトップは町長になると説明しましたが、実際に町長が、まちづくり公社の実務に携わることはありません。
実務上の経営トップをおくことになっていますが、実は、実際の経営のトップとなる人物がまだ決まっておりません。また、公募するのか、一本釣りで引き抜いてくるのかなど、どのように決めるのかも、決まっていません。
もちろん、予算が可決しないことには行政は動けないので、3月議会の時点で決まっていなくとも仕方がない面もありますが、どのように決めるのかといった選考方法については、あらかじめ決めておくべきだったのではないかと思います。
議会としての付帯意見
議会では、議案を可決する際に、付帯意見を提出することがあります。
付帯意見とは、「賛成はするものの、こうした配慮はしてくださいよ」という、条件付きの賛成のようなものです。
今回の議会では、まちづくり公社に関連する事業についての付帯意見として、次のような意見を提出しています。
「まちづくり公社の詳細な収支計画と人事計画について、適宜、議会に説明を行い事業を進捗すること」
今後も注視していきます
以上、現時点で、まちづくり公社について、私が知り得ている情報をまとめてみました。
町としても初めての試みですので、いろいろな試行錯誤や紆余曲折は、今後もあると思います。
新しい情報があれば、また、ブログでまとめたいと思います。
では、今回はこれで失礼します。
道の駅売店の出荷者協議会で役員をしていることもあり、説明会では少々噛みつかせてもらいました。両売店に品物を卸している1人の出荷者としては運営が一本化されることには賛成です。ただ、運営が民間団体に一本化されるだけで両売店の運営がうまくいくのか、赤字が減るのか、疑問に思っています。
両売店には立地の悪さや店舗構造の欠陥、駐車場や施設内レストランなどを含めた施設全体の管理の難しさなどがあります。
長く道の駅の運営を見てきましたが、設置当初から言われてきた問題点のうち、改善できたり何らかの打開策が講じられてきたのはごく一部でした。それが「原因は役場が運営してきたからで、公社に変われば劇的に変わる」というのでしょうか?
運営の改革によってそれらの問題を解決しやすくなるのであれば良いのですが、多くは変わらないように思えますし、帰って面倒なことにもなりかねない。そんな中で両店舗を抱えて黒字経営なんでできるのでしょうか?
「現状でも道の駅売店は黒字」と言われていますが、私ら出荷者協議会役員も協議会組織の決算は把握していますが、売店運営の収支については売上げ額くらいしか知らされていません。おそらく町役場的には役場が支出している額との差し引きだけで黒字と言っているのだと思いますが、そのあたりも不安に感じる要素です。
コメントありがとうございます。
道の駅と鬼八の蔵について、ご指摘のとおり、運営がまちづくり公社になっただけで、劇的に変わり、黒字になるということはないと、私も思います。
課題解決のためには、運営者だけではなく、様々なことを変えていく必要があると思っています。
ぜひ、今後ともお力添えをお願いいたします。