こんにちは。
高千穂町議会議員の板倉哲男です。
今回の記事は、道の駅と鬼八の蔵の管理者に、町の出資で設立された高千穂まちづくり公社を指定した議案についての審議経緯のまとめの2回目です。
具体的には、6月議会の会期中に開会された、総務産業常任委員会の様子をまとめたいと思います。
議会における議案審議の流れ
本題の前に、議会における議案審議の流れについて説明をしたいと思います。
議案を審議する際、基本的には下記のような順序で審議をします。
①執行部による議案の提案理由説明(本会議)
↓
②議案について議員から執行部に質疑(本会議)
↓
③委員会における質疑、討論、採決(委員会)
↓
④委員会における採決の結果報告(本会議)
↓
⑤討論、採決(本会議)
①②は、言葉どおりの意味ですので、分かるかと思います。
③に出てくる「委員会」については、あまり聞きなれないと思いますので、説明します。
高千穂町の全議員と、町長、副町長、教育長、各課長が集まって審議をするのが本会議です。
しかし、全ての議案を本会議だけで審査をするとなると、効率が悪くなります。
専門的な審査をするには、関係課長および担当職員とともに審査をするほうが、詳細に審査ができます。
そのため、高千穂町議会では、議員を2つのグループに分け、それぞれ委員会を組織しています。
具体的には、「総務産業常任委員会(以下、総務委員会)」と「文教厚生常任委員会」の2つの委員会です。
委員会において、本会議以上に詳細に、執行部側から提案理由説明を、議員側から質疑を行い、委員会において賛成すべきか、反対すべきかの採決をします(③)。
そして、本会議に戻り、委員会における採決結果を、他の議員にも報告します(④)。
次に、⑤の討論となります。
討論とは何かというと、すでに賛成、反対の立場を決めている議員により、なぜ賛成か、反対かの理由を交互に述べることができるのですが、これを討論といいます。
そして、議会としての最終的な採決をとり、議決とします(⑤)。
これが基本的な審査の流れです。
(ただし、議案により委員会を経ずに、本会議のみで審議するものもあります。)
なお、道の駅と鬼八の蔵の管理者の指定については、「総務委員会」が担当しました。
6月10日 総務委員会1日目
6月7日に①の議案の提案理由説明があり、6月10日の午前中に②の質疑がありました。
そして、6月10日の午後に、③の総務委員会を開催しました。
その中で、大きく2つの懸念事項が見受けられました。
1点目は、鬼八の蔵、道の駅における販売手数料の改正です。
それまで、例えば、鬼八の蔵では、農産物は18%、加工品は20%、要冷蔵品は+2%という販売手数料でした。
それを、公社の運営に変えるタイミングで、一律で25%、要冷蔵品は+3%にするとの説明がありました。
すでに説明会も行い、反対意見もでていないとのことでした。
2点目は、道の駅で、テントや移動販売車で出店してくれている事業者の出店料についてです。
道の駅の出店料については、以前から1カ月5万円という金額が決められていましたが、コロナによる利用客の減少が続いていることから、道の駅と出店者の協議により、コロナ禍以降は半額以下の出店料となっていると、私は出店者本人から聞いていました。
にもかかわらず、公社の担当職員は出店料が半額以下となっている事実を直前まで知らなかったようで、公社の運営に変えるタイミングで、元来の取り決め通りの1カ月5万円を請求したいと考えていることが、うかがえる発言がありました。
そもそも、まだ公社の担当職員と出店者の間で協議もしていないとのことで、これからするとのことでした。
特に、この2点について、多くの議員が、より詳細な調査が必要だとの考えに至り、その日はいったん終了しました。
6月14日 総務委員会2日目
6月14日に、2回目の総務委員会を開催しました。
また、この6月14日は一般質問があり、その中で、販売手数料についての新たな懸念がありました。
一般質問の中で、まちづくり公社の議題になった際に、販売手数料についての議論になり、その際、町長の答弁として、「手数料につきましてはまだ確定ではない」との発言がありました。
まちづくり公社は高千穂町が単独出資の会社のため、町長が社長です。
その町長がこのような発言をしたため、懸念がさらに高まりました。
また、この間にそれぞれの議員が各自調査した結果の報告もありましたが、「新しい手数料についての生産者向け説明会では、とても意見を言えるような雰囲気ではなかった」ということや、「表立って反対意見を述べないものの、手数料が上がることについて、不満を漏らしている人もいる」という話も出てきました。
私もいろいろな方の話を聞く限りにおいては、例えば鬼八の蔵の場合、農産品は18%、加工品は20%と差があったにもかかわらず、新しい手数料は一律25%とのことで、農産品の出荷者の方ほど、手数料が高くなった印象を持っておられる印象を受けました。
さらに、近隣の直売所の手数料を調べたところ、日之影町は15%、五ヶ瀬町は20%、よっちみろや14%(数字はいずれも地元農産品)とのことで、25%という数字が、やはり近隣の直売所に比べて高いこともわかりました。
こうしたことから、「手数料については、生産者も交えて、再協議するべきではないか」といった意見もでました。
また、まちづくり公社は、高千穂町のふるさと納税の業務を委託することとなっていましたが、その委託契約の契約書がまだなかったりと、書類の不備も見られました。
委員会における討論
以上のようなやりとりを経た後、委員会における討論に移りました。
反対の立場で、
「手数料の件について、出荷者との協議、および出荷者への説明が十分ではないと感じる」
「公社を6月に設立し、7月に指定管理者とすることは、あまりに拙速であると感じる。すべての準備が整ってからの指定管理でよいのではないか」
「公社は町単独の出資であり、民間活力を生かせるとは思えない」
「書類などの不備が多い状態で議案を認めてほしいと議会に諮るのは、議会軽視である」
といった意見がありました。
また、賛成の立場で、
「鬼八の蔵については、以前から赤字であり、赤字解消のためには、道の駅と統合してはどうか、経営のプロが必要ではないかという提言は議会がずっとしてきた。それがようやく実現した」
「今のままの体制では、今以上の発展を期待できない。新しい体制となる道の駅、鬼八の蔵を見守っていきたい」
といった意見がありました。
委員会で否決
討論の後、総務委員会として、この議案に賛成すべきか、反対すべきかを決める採決に移りました。
総務委員会には7人の議員がいますが、そのうち、委員長を除いた6人で採決した結果、賛成2人、反対4人となり、総務委員会の意見としては、この議案は反対すべきだと、報告することが決まりました。
否決となるのは非常に稀なことで、私は議員5年目ですが、初めての経験でした。
また、私よりベテランの議員に聞いても、否決となった事例は記憶にないとのことでした。
今回の記事は、ここまでとします。
次回は、委員会の否決から、本会議では一転して可決となった経緯をまとめたいと思います。
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